【映画】るろうに剣心 最終章 The Beginning【解説レビュー】
いや、良かった!1日経っても映画が頭と心から抜けません。
剣心役の佐藤健さんと巴役の有村架純さん、少ないセリフとわずかな表情の変化で見事に人の心の動きを表現されていて、惹きこまれます。
わたしは「るろうに剣心」は第1作目の映画と単行本の1巻しか観たことなかったんですが、問題なく楽しめました!
むしろこの作品を見てから本編や前編にあたる映画たちを楽しむのもあり、なんじゃないかなあと思います。
このレビューでは、ちょっとわかりにくかった歴史的背景をまず解説しています。
以降は映画の内容を含みますので、まだ観ていない方はご注意ください。
はじめに:幕末の背景と剣心の立場を解説
江戸時代末期、鎖国をしていた日本に外国の黒船が来航、国内は大騒ぎに。
対応に諸藩は動揺し、江戸幕府の体制も揺らぎ始めます。そんななかで、江戸幕府と京都朝廷の意見が主に外交面で不一致であるとの問題も表面化していきます。
江戸幕府は、「幕府は朝廷から国政を任されたものだ」という大政委任論を朝廷に確認させることで、公武合体による幕府の強化を図っていこうとします。
これには京都の公家たちも意見が割れ、幕府と朝廷の結びつきを強くする公武合体に反対するものも多くいました。
諸藩も混乱しており、大きく分けると、幕府を維持しようとする派(佐幕派)と、幕府の改革・刷新を唱える派(倒幕派)に分かれていきました。
各藩内でも意見は一致せず揉めており、脱藩や内紛、途中からの方針転換も多く発生しています。
作中では剣心が対馬藩内の佐幕派だけを一掃することで、対馬藩内での倒幕派の力を強めています。
倒幕派の方針は多様でしたが、「尊王攘夷」「勤王の志士」として、天皇に対する忠誠はほぼ共通でした。
作中での剣心は倒幕派の先鋒である長州藩に所属し、桂小五郎(のちの木戸孝允)のもとで、倒幕に邪魔な人物の暗殺を担当しています。
剣心が長州藩にいた理由は、新しい世の中をつくるという志を持って、長州藩が募っていた奇兵隊に自ら志願したからです。
倒幕派の長州藩は、いったんは開国して外国の知識を吸収し、外国に対抗できる国力を備えるべきだという考えを持っている藩でした。吉田松陰の松下村塾の影響を強く受けた人物が多くいます。
一方、江戸幕府が京都を守らせているのが新選組と京都見廻組です。
当時の京都には倒幕を推し進める志士たちが集まって公家や武士の暗殺が横行し、治安が悪化していたのです。
長州藩は、池田屋事件後に強硬派が起こした「禁門の変」で京都の町を焼いたことで朝敵となり、「第一次長州征討」が行われる事態にまで発展していきます。
作中ではこの頃の剣心は15歳ぐらいで、京都の町を離れて姿を隠して暮らし始めています。
そしてこの後、剣心は暗殺担当を志々雄に引き継ぎ、要人の護衛を担当するようになります。
倒幕運動は幕府から天皇に大政を返還(大政奉還)することで、ひとまずの決着となりました。
しかし天皇による統治体制がまだ弱体だったこともあり、旧幕府側・倒幕側ともに一部勢力は収まりませんでした。
旧幕府側と新政府側との戦いとなった鳥羽伏見の戦いでは、天皇が薩摩や長州などの新政府側(官軍)に錦の御旗を与えることで、旧幕府側を朝敵であると宣言します。
鳥羽伏見の戦いを最後に、剣心も刀を捨て、戦から退きます。
新選組は旧幕府側として戦い、鳥羽伏見の戦いの後も各地を転戦しながら次第に四散していきます。史実では斎藤一も会津まで戦ったあと投降、のちに警視庁の警察官となっています。
江戸城は無血開城しますが、その後も旧幕府側と新政府側の戦いである戊辰戦争は続き、明治政府が発足してからもしばらく混乱はつづくのです。
幕末の京都をもっと知りたくなる
TheBeginningは剣心がまだ京都にいる頃のお話です。
本編から10年以上前の物語で、剣心がこれから歩む人生において、核となる部分です。
実際にあった歴史的事件も散りばめられています。
剣心の物語は、ここから始まるのです。
序盤から見入ってしまうアクション、京の町や建物内の様子も興味津々で、観たらぜったい幕末の京都や歴史を知りたくなります。
原作も読みたくなる
映画を観た翌日には全巻(単行本だと全28巻)を電子書籍のモノクロ版で購入してしまいました。
1990年代の作品なんですが、まったく色あせを感じなくて面白いです!
以前にもアニメ化されているんですが、2022年以降にも新しくアニメ化されることが発表されましたね。
圧巻の剣術シーン
映画での抜刀斎の圧倒的な強さと剣術シーンも圧巻の迫力です!
佐藤健さまが直で演じられているというのには驚きました。
動きが速すぎです!佐藤健さんが速いから周囲もどんどん速くなっていくんだと思います。
沖田総司役の村上虹郎さんが放つ存在感
”新撰組”沖田総司役の村上虹郎さんがまた素晴らしい。
雰囲気・動き・表情どれも役にはまっていました。
長回しのアクションシーンは見ごたえ十分、とても印象に残るものでした。
史実でも、池田屋事件に参加した沖田総司は病で戦線離脱したとされています。
佐藤健さんもこのシーンは特にこだわって力を入れたようで、初参加ながらそれにしっかり応えた村上虹郎さんもすごいです。
これからさらに飛躍していく役者さんだと思います。要注目です。
登場人物の心情がしっかり伝わってくる
抜刀斎(剣心)のピュアさや信念もしっかり描かれています。
特に、さりげない表情の変化から抜刀斎たちの心情の移り変わりが分かり、そこがとても良かったです!
剣心がはじめて奇兵隊に志願したとき、人斬りとなるとき、疑問を感じたとき、辛いとき、幸せなとき、信念をかためたとき、全てのシーンで気持ちがしっかりと伝わってきます。
こうした過去があってこそ、本編の剣心は生まれたのだなあと考えると涙が出てきます。
ここまで完璧に演じてくれた佐藤健さまありがとうございますと思います。
一作目から観たくなってしまう
この映画を観たら、一作目から観たくなってしまいます。無限ループです。
高知には4DX映画館もIMAXもないので普通版でしか見られないのが残念です。
時間の経過とともに少しずつ変化する抜刀斎の表情を、是非みなさまもご覧ください!
前作などはAmazonプライム・ビデオで(有料ですが)視聴できます♪
他にもアニメや小説、Blu-rayなどたくさんあるようなので、是非探してみてくださいね♪